13.喩えの話し――方便

 法華経に方便品というお経があります。
 よく、うそも方便という、その方便です。
 ただ、方便というのは相手の利益を考えてのことですから、まるっきりダマスということではありません。
 方便品は法華経の教えの始まりで、釈尊は難しい教えであることを、前以って述べられています。「難解難入」(なんげなんにゅう)がそれです。
 その難しい教えとは、二乗作仏(にじょうさぶつ)です。そして十如是(じゅうにょぜ)を理解することにあります。
 十如是は如是相からはじまるお経のところです。これは体・用(ゆう)・因・果を説いています。
 しかし、お弟子さんの多くは理解できませんでした。
 理解できたのは、たった一人、シャリホツだけでした。
 ですから、シャリホツは華光如来と言う授記をうけます。
 授記というのは、釈尊から直接に成仏の予言と保証をもらうことです。方便品ではシャリホツのみが、この授記をうけています。
 また、法華経で成仏の保証をうけたとうことは大事なことです。
 日蓮聖人は、シャリホツが阿弥陀経では成仏できなくて、法華経にてはじめて成仏したということを根拠にして、法華経が優れていることを述べています。

 さて、方便品にて理解できなかったお弟子さんのために説かれたのが、次の譬喩品です。
 譬喩とはたとえ話しのことです。
 「三車火宅」(さんしゃかたく)の喩えを話します。
 立派な大きな屋敷に子供たちがたくさん遊んでいたとします。火事がおきても子供たちは遊びに夢中で気がつきません。家の主人がいくら叫んでも、よく意味がわからないで戯れています。そこで主人は子供たちを外に出すために、羊の車、鹿の車、牛の車があるよと言って注目させ、それに興味をもった子供たちが、その三つの車を見ようと外に出てきて、火災から助けられたと言う話です。
 これを方便と言います。そして外には大白牛車という三車よりすばらし車を与えられています。
 この大白牛車という乗り物は、大勢の人を救う車であり、誰もがこの一つの車に乗れることを教えられました。
 この大白牛車は法華経の教えです。
 そして、三つの車とは声聞・縁覚・菩薩の教えをいいます。法華経の以前はそれらは別々の教えであると言ってきたが、本来は区別され、差別されるものではないことを示されたのです。一つの車、すなわち大白牛車とはそのことを言います。
 これが、二乗作仏といわれる教義です。
                               (H17/2/18.勉強会)