21.法師・宝塔品に事(こと)起こり

 日蓮聖人の教えは法華経のなかでも本門を中心としています。
 その本門の中心は寿量品です。
 寿量品に大事な教えが説かれますが、その入り口になるのがこの法師・宝塔品になります。事(こと)起こると日蓮聖人が言われるののはこの理由によりものです。

 法華経は迹門と本門の二つに分かれ、迹門も本門もさらに三つに分かれます。
 序分・正宗分・流通分の三つの構成になっています。
 今回の法師品第十から安楽行品の第十四までが流通分(るつう)になります。
 流通とは広めることを意味します。広宣流布のことです。

 法師品には、法華経が第一の教えであると説かれます。
 そして難信難解であるからと示されています。
 更に釈尊は未来に向かって、この法華経の教えを広めることを示唆します。
 如来(釈尊のこと)の現在ですら迫害が多い、まして自分の滅後においてはなおさらであると説かれます。
 そのために釈尊は四衆を遣わして守らせると言います。
 「我れ化の四衆、比丘・比丘尼・ウバソク・ウバイを遣わして衛護せしめん」というのはこのことです。比丘とは僧侶、比丘尼とは尼僧、ウバソクとは男性の信者、ウバイとは女性の信者です。

 さて、法師品で釈尊は今まで四十二年、教えを説いてきて、また、これからも教えを説くであろうが、その中でもこの法華経こそが第一の教えであると述べました。そして、もっとも信じ難く理解し難いであろうが、仏弟子はこの法華経を説かなければならないと流通を勧めました。
 そのときに、宝塔があらわれ、その中から大きな声で「善哉善哉、釈迦牟尼世尊の教えは皆、真実である」という声が聞こえました・
 これが宝塔品の始まりです。
 寒修行で唱える「そのときに宝塔のうちより‥‥」はここをさしています。
 法師・宝塔品は日蓮聖人の教えの中でも大事なところでございます。次回はさらに深めてお話し致します。