36.属累(ぞくるい)

 神力品は釈尊が上行菩薩に、末法に法華経を広めることを委嘱したお経です。
 上行(じょうぎょう)菩薩は釈尊の最古の弟子で、この最初でもっとも古いお弟子のことを本化(ほんげ)といいます。本化の「本」とはこのことで、「化」とは教化(きょうけ)ということで、教え導いてきたという化導のことをいいます。
 つまり、本化上行菩薩とは釈尊の久遠の弟子ということです。そして、この本化の菩薩たちを地涌の菩薩といいます。それは、釈尊の呼びかけに答えて大地から湧出した菩薩だからです。地涌の菩薩は六万恆沙というたくさんの菩薩から構成されています。恆沙というのはインダス河の微塵の砂がたくさんあるように、たくさんの菩薩がいることを表しています。この菩薩の代表が4菩薩で、上行・無辺行・浄行・安立行の4人の菩薩をいいます。この4人の菩薩の上首(じょうしゅ)といって、代表した菩薩が上行菩薩です。
 釈尊はこの上行菩薩たちに、末法の弘教を任せたのです。
 「そのときに仏、上行等の菩薩大衆に告げたまわく」
 と、いうのはこのことをいいます。また、これを、付属(ふぞく)といいます。この付属をうけた上行菩薩は、
 「日月の光明の暗い闇夜を除くように、よく衆生の苦しみを救う。このゆえに私が滅度した末法に上行菩薩の教えを聞きなさい。この人は仏道において一つの疑いはありません」と、釈尊は説かれたのです。
 そして、つぎに釈尊は属累品を説きます。
 属累とは付属とおなじことです。付属をつぎつぎにたくさんの菩薩たちにすることから属累といいます。
 ただし、この属累は正法・像法時代に仏教を広めなさいというところに、神力品との違いがあります。神力品において上行菩薩に付属したことを別付属(べっぷぞく)といい、属累品の付属を総付属(そうふぞく)といいます。
 属累品において釈尊は、これまでの無量の菩薩たちに、末法という時代に本化上行菩薩が生まれるまで、仏教を絶やさないように生まれてきて、仏法を説くようにと付属したのです。  (H20.4.18.勉強会より)