49.陀羅尼品の「五番神呪」 |
陀羅尼品には「五番神呪」が説かれています。 「五番神呪」を別な言い方をしますと、「二聖・二天・十羅刹女鬼子母神」のことで、それぞれが、呪文を示して法華経の信者を守護することを説いています。 二聖とは前にお話しいた薬王菩薩と、それに勇施菩薩の二人の菩薩のことをいいます。二天とは四天王のうちの毘沙門天王と持国天王の二人の天王のことをいいます。それに十羅刹女と鬼子母神を一つとして加えた五人が、法華経の信者を守護すると誓い、そのための秘密の呪文を示されました。 お経の展開は、薬王・勇施・毘沙門・持国・刹女と五人が、それぞれの誓いと守護する内容をのべていくところから五番といいます。そして、それぞれの呪文である神呪を唱えることから「五番神呪」といいます。 「五番善神」という言い方もあります。日蓮聖人は陀羅尼品のこれらの善神が、末法の法華経を信仰する者を必ずも守るとして、お手紙などにこの主旨を書いて信心に励むよう、また、これらの善神に守護されるような信仰をするようにとのべています。 私達が「五番神呪」である、「アニ・マニ・マネ・ママエ」と唱えることは、災難などの怨敵から守ってもらうという行為となります。怨敵を退散することと、守護していただくという願いを込めた読経となりましょう。この陀羅尼を何回も転読し、たくさん量読することは、自分自身の行力を高めることになります。 『日女御前御返事』に、 陀羅尼品と申は、二聖・二天・十羅刹女の法華経の行者を守護すべき様を説けり。二聖と申は薬王と勇施となり。二天と申は毘沙門と持国天となり。十羅刹女と申は十人の大鬼神女、四天下の一切の鬼神の母なり。又十羅刹女の母あり、鬼子母神是也。鬼のならひとして人を食す。人に三十六物あり。所謂糞と尿と唾と肉と血と皮と骨と五蔵と六腑と髪と毛と気と命等なり。而に下品の鬼神は糞等を食し、中品の鬼神は骨等を食す。上品の鬼神は精気を食す。此十羅刹女は上品の鬼神として精気を食す。疫病の大鬼神なり。鬼神に二あり。一には善鬼、二には悪鬼なり。善鬼は法華経の怨を食す。悪鬼は法華経の行者を食す。今日本国の去年今年の大疫病は何とか心うべき。此を答ふべき様は一には善鬼也。梵王・帝釈・日月・四天の許されありて法華経の怨を食す。二には悪鬼が第六天の魔王のすゝめによりて法華経を修行する人を食す。善鬼が法華経の怨を食ふことは、官兵の朝敵を罰するがごとし。悪鬼が法華経の行者を食ふは、強盗夜討等が官兵を殺すがごとし。 例せば日本国に仏法の渡てありし時、仏法の敵たりし物部大連・守屋等も疫病をやみき。蘇我宿祢・馬子等もやみき。欽明・敏達・用明の三代の国王は心には仏法・釈迦如来を信じまいらせ給てありしかども、外には国の礼にまかせて天照太神・熊野山等を仰ぎまいらせさせ給ひしかども、仏と法との信はうすく、神の信はあつかりしかば、強きにひかれて三代の国王疫病疱瘡にして崩御ならせ給き。此をもて上の二鬼をも、今の代の世間の人人の疫病をも、日蓮が方のやみしぬをも心うべし。されば身をすてて信ぜん人々はやまぬへんもあるべし。又やむともたすかるへんもあるべし。又大悪鬼に値なば命を奪はるる人もあるべし。例せば畠山重忠は日本第一の大力の大将なりしかども、多勢には終にほろびぬ。 と、のべています。 私達は日頃、アニマニマネママネと唱えている陀羅尼神呪は、このような二聖二天十羅刹女の、行者守護の誓いの有難い経文であったことを、深く心に刻んで信心に励みましょう。 |
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