88.無量義経・法華経

○『無量義経』

『無量義経』三品・『法華経』二八品の科段(序・正・流通分)は、『開結』の末尾に掲載されています。各品の構成は、これによって知ることができますので、科段を参照にして学んでいきます。

『無量義経』一巻は『法華経』の開経となります。徳行品・説法品・十功徳品の三品に分かれています。

 説時は、説法品に「如来の得道より巳来四十余年」とあることから、『法華経』に繋がる時期であり、ゆえに、説処も霊鷲山です。

「徳行品」―――序分

「説法品」―――正宗

「十功徳品」――流通分

◇ 徳行品第一

 「徳行品」には、会座の万二千の声聞と、八万の菩薩を代表して大荘厳菩薩が、仏身と仏徳を賛歎しています。

◇ 説法品第二

 「説法品」には、釈尊が大荘厳菩薩の問いに対し、「無量義」の法門を学べば菩提を成ずると説き、「無量義」は無相実相の一法より生ずると説いています。

「無量義」の法門とは「性欲無量なるが故に説法無量なり、説法無量なるが故に義も亦無量なり。無量義とは一法より生ず、その一法とは即ち無相なり」(『開結』一六頁)、と説かれる「従一出多」の教えのことです。「一」とは「唯有一乗法」の法華経、「多」とは方便権経である爾前諸経をいいます。

◇ 十功徳品第三

 「十功徳品」には、菩提の大直道である『無量義経』を修行すれば、十種の不思議な功徳力があることを説きます。そして、釈尊は大荘厳菩薩と八万の菩薩に『無量義経』を付属し、他の菩薩にたいして弘教を誓っています。

―主要経文―

「説法品」

「文理眞正尊無過上三世諸仏所共守護」(『開結』一七頁)

「四十余年未顕真実」(『開結』二〇頁)

「善男子初説四諦為求聲聞人而八億諸天来下聽法発菩提心中於処処演説甚深十二因縁為求辟支仏人而無量衆生発菩提心或住聲聞次説方等十二部経摩訶般若華厳海空宣説菩薩歴劫修行」(『開結』二二頁)

「十功徳品」

「過無量無辺不可思議阿僧祇劫終不得成無上菩提所以者何不知菩提大直道故行於険徑多留難」(『開結』三〇頁)

「諸仏国王是経夫人和合共生是菩薩子」(『開結』三七頁)

「六波羅蜜自然在前」(『開結』四一頁)

 「四十余年未顕真実」の文は、釈尊「一代五時」における、爾前四二年の経を方便と断定し、『法華経』八年の説を真実とした證文となります。つまり、爾前経は「未顕真実」であり、したがって前四時の教は権経、『法華経』は実経とする、権実判の文証となっています。「初説四諦」の文は、「一代五時」における教相判釈の文証となります。

「四十余年」を四二年と確定しているのは、現存しませんが菩提流支撰の『法界性論』によります。『注法華経』に、「准菩提流支法界性論云。仏成道後四十二年説法華経」と引用されています。

 「諸仏国王是経夫人」の文は、本仏釈尊と『法華経』の関係を「仏父経母」に譬へ、ここに「仏種」を論じています。「六波羅蜜自然在前」の文は、受持成仏を説く文証とされ、『観心本尊抄』の「自然譲与段」の文証として引用されています。

○『法華経』

 ・一経三段

   序分―――序品第一

   正宗分――方便品第二〜分別功徳品第一七前半

   流通分――分別功徳品第一七後半〜勧発品第二八

 ・ニ経六段

   迹門―――前一四品

   本門―――後一四品

迹門 正宗分(三周説法)

     法説―方便品・譬喩品・・・・・・・上根

     譬説―譬喩品〜授記品・・・・・・・中根・・正説・領解・述成・授記

     因縁―化城喩品〜授学無学人記品・・下根

    迹門 流通分

     法師・宝塔品―菩薩―「三箇の勅宣」

     提婆達多品――菩薩―「二箇の諫暁」

     勧持品――――菩薩―「二十行の偈」「三類の強敵」

     安楽行品―――菩薩―「四安楽行」

    本門 序分

     従地涌出品(前半)―略開近顕遠

    本門 正宗分

     一品二半――――――広開近顕遠

    本門 流通分

     分別功徳品――四信五品

     隋喜功徳品――五十展転

     法師功徳品――六根清浄

     常不軽菩薩品―信毀罪福(但行礼拝)

     如来神力品――別付属(結要付属)

     嘱累品――――総付属

     薬王菩薩品――化他苦行

     妙音菩薩品―― 〃三昧

     普門品――――  〃

     陀羅尼品――― 〃総持

     厳王品―――― 〃誓願

     勧発品――――自行神通

 ・二処三会(末法付属)

    霊山会(前)

    虚空会   宝塔品〜属累品(一二品)

    霊山会(後)

 ・虚空会(末法為正)

   寿量品――――久遠実成

   寿量品の前後―本化上行の末法応現

   一二品――――娑婆即寂光