11.尼さんのインド旅行記(6)

 このクラークスホテルダラジギルの霊鷲山で、結婚式をされた山口夫婦のカクテルパーテイ並びに、私達仏跡巡拝団に対する歓迎パーテイが催された。
 このパーテイの企画はクラークスホテルの支配人のご好意であり、インドの古典的なわびしさのある音色の音楽も披露していただき楽しい一夜を過ごしました。男女ともにビールを飲んで涼しい風に吹かれ、キラキラと星が光り、この夜は又、半月で、何とも言えない詩人なれば、一句のでるところと思われる夜でした。
 19日。早朝、世界的に有名なガンジス河の沐浴を見物。バスをガンジス河の近くで降りて歩いたのですが、物売りの人で大変でした。ガンジス河へ行く途中に道路に白い布を被せた死体があり、その上にお金が置いてあったり、ライ病の人がズラリならんで座って居たりで歩かれないほどです。
 このガンジス河に沐浴するために、たどりついて死んでも本望だそうです。ここには焼き場もあり、お金のない人はこの河へ捨てられ、お金のある人は焼いてもらって河へ捨ててもらう。
 私達は舟を出してもらい、上の方から下の方へと舟をこぎましたが、上の方ではセンタク物をほしながら、大勢の人が河に入ってセンタクをしている。舟の向きを変えて下の方へ行くと、顔を洗う人、歯を磨く人、胸まで入って手を合わせて朝日を拝む人とさまざまで、岸や河中には死体が流れ浮いていて、その死体にはハゲタカがついばんでいる光景が見られる。何ともいいようのない異様な感じがします。
 ガンジス河よりサルナートに向かう。サルナートはヒンズー教の聖地でベナレスの駅から北へ十キロにあり、釈尊が「初転法輪」、すなわち、五人の比丘に始めて説法をされ、鹿野苑(ムリガターブア)の遺跡があります。
 ここに立っているダーメクの塔は煉瓦造りの大きな円筒型の建物で本来は仏像を安置するために刻みこまれた装飾彫刻をめぐらした、一段と大きな丸胴の基部を持っています。
 その近くには紀元前三世紀に阿育大王が建てた石柱の基部が残っており、柱頭の美しい獅子像は現在サルナート博物館に保存されています。