15.尼さんのインド旅行記(9)

二十一日。ゴラクプールを早朝出発し、ネパールの釈尊の降誕の地ルンビニ園にむかう。バスから眺める景色は広大であり大きな森など一つもなく、又、一面野原で木とて一本もない所を通り、たまたま町へ入ったと思ったら赤道で、そこで一時間近く待つ。朝早く出たのにルンビニ園に付いたのは一時すぎ、バスにゆられるのも楽じゃない。ここでお上人さんが乗っていたら大変だったと思いました。腰が痛くて立ってる人もおりました。

ルンビニ。釈尊の降誕の地です。阿育王は在位20年目に此の地を訪れ「ここに生を享けた仏陀を記念するため馬の像を石に刻み石柱を建てさせる」と勅命しています。ルンビニーとはもともと浄飯王(釈尊の父王)の居城カピラヴァスツから16キロほど離れた、沙羅双樹の林のことを指したのです。シッダルタ太子は生母摩耶(マヤ)夫人がお産のために里帰りをする途中、この林まできて美しく花咲く、無憂樹の枝に手を伸べた時、その右脇から生れたと伝えられています。今では無憂樹の花もないそうですがさぞかし昔はきれいな花が咲き乱れていたことと思はれます。ルンビニ園は広大な広野でお花一つなく昔をおもわせるものは階段と四方20mもあるかと思はせる所に石塔があるだけで淋しい所でした。ルンビニ園で昼食をとった後、バスにてパルランプールに向う。此の日は一日中乗っていたので頭の先から足までホコリで真白になりさすがの私も疲れて目の底がいたいと思いました。途中田舎の町で一プク、バスからおりてコーヒー牛乳に似たものをのみひと息つけて、又走りました。パルランプールの宿舎に着いたのは午後十一時頃でした。此の宿舎はベットがあまり良くなく、水の出も悪く夕食をとり疲れた体をベッドへ横たえる。今日も月がコウコウと光り札幌が恋しく、家族の事を思い出しながらねむりました。私は旅行が多く旅なれしておりますのに、インドというところは哀愁をさそうようです。                                               つづく
                                    (HP協力・木村妙子さん)