9.尼さんのインド旅行記(4)

 17日
 デジルギールのツーリストバンガローの宿に着きましたが、どこへ行っても宿らしくなく、虫とヤモリに悩まされます。
 今日は朝4時に起きて霊鷲山(りょうじゅせん)へ出発。バスで少々5キロか6キロも行ったでしょうか、バスを降りて霊鷲山へ登る。坂はだらだら坂で、アスファルトであった。歩いて40分か50分かと思ったが、電池の光で足元を照らしてのことなので、長い時間に感じられた。着いた時ようよう足元が見えてきました。
 この霊鷲山で、高橋先生を導師として仏恩奉謝の大式典を行いました。
 私も身内の先祖や檀信徒の先祖を大勢お連れしたので、前におまつりして、一心に読経しました。お経の最中に東の方よりお日さまが登り始め、山より登ったので何もめずらしことでもないのに、何か何か不思議な気持ちでした。
 日本で見ることのできない、キレイな赤いお日さまでした。このとき、私は涙落とすなかで、私のような女が、法華経の行者と言われ、一尼僧であることの責任の重さと喜びを持って心底、土に頭をつけむせび泣いたのです。先祖も皆、無量の喜びを戴き、うれし泣きに泣いたことと思います。
 この霊鷲山で先生方とともに写真を撮り、もう二度と来ることのできない霊鷲山の山より、一足一足ふみしめながら帰りはじめました。
 帰りによくよく四方をながめますと、緑が強く大きな木がなく、石ばかりで花が色々と咲き乱れて木は(ネム)の木が多く、ネムの木の花は、ボタン色と黄色、赤とありまして、真綿のような花が咲きます。名の知らない色々なお花をたくさん採りましたが、日本まで帰るのに多くだめになり残念しました。
 霊鷲山は(ダリダニクタ丘)釈尊がよく篭られたと言われ、また、盆地へ入る北門わきの、バイバラ山には仏滅後釈尊の説いた法の道を伝承布教する方法を討議するため、五百人の僧が最初の結集(けつじゅう)を行なった七葉(サブタバルニ)があります。
 この村には昔の建物はほとんど何も残っておりません。

 *霊鷲山という小高い丘で釈尊は法華経をお説きになりました。