108.終戦80年にむけて     高橋俊隆

   2025年、令和7年に太平洋戦争の終戦より80年を迎えます。

私は戦後の生まれなので直接戦争は経験していませんが、戦争を経験された人たちの言葉を多く聞いてきた年代ではあります。各家には戦死された子供や夫、兄弟などの写真が掲げられていました。仏壇の中のお位牌も戦死された方とわかるお戒名でした。

 私の師匠は戦争当時、富山におり直接爆撃を経験された人でした。家々が焼け銃弾が飛び交う中を逃げ走ったそうです。火災の熱さに川に飛び込む者がいたなか、後ろから大きな声で「川に飛び込むな! 焼けるぞ!」と言われても、次ぎ次ぎと川に飛び込んでいたそうです。師匠は防空壕に押されてはいり命を助けられました。声を掛け防空壕に導いて下さった方は銃弾を受け、外に出た時には亡くなっていました。川に飛び込んだ人たちも油に焼けて浮かんでいたそうです。そう語ることは20年の間に3度ほどで、辛い経験なので自らは語ろうとはしませんでしたが、戦争の悲しみを語って下さったのです。

 戦争は悲しいこと、と思いました。

 仏教界も戦争と平和についての声明を出すようになっています。国連や国際法の問題点、非戦を掲げても領土を奪おうとする国から侵略されないということは楽観的と言われます。争いをすることは人間の本性であるという哲学者の意見もあります。

 樺太から引き揚げた人たち、満州から引き揚げて来た人たち、北方領土から引き揚げて来た人たちの言葉を聞いてきました。残忍なことばかりです。

シベリアに抑留された人や従軍された人たちは、そのことを心の奥底に閉じ込めていました。私はその方々がひっそりと語る胸の苦しみを感じていました。私は戦争に参加しないと思いました。反省をされている人たちの心を知り、辛く悲しい思いをするよりも、と思ったからです。

平和を維持するために国際社会のなかに日本の文化や仏教的な国民性を示して行くべきという意見もあります。これは軍事力や経済力といったハードパワーではない、国際世界から認められる国民性であるソフトパワーのことです。人はみな仏と説く仏教は殺生を固く禁じ不殺生戒という守るべき規律としての戒律を説いています。

 NHKは終戦80年に向け特集アニメが制作されることを発表されました。  古い映画では1956年の「ビルマの竪琴」、2015年の吉永小百合さん二宮和也さんの「母と暮せば」などの作品があります。20年前と現在では戦争のとらえ方が大きく変わったそうです。日蓮宗においては今日における平和論の構築を考えています。合掌