22.除夜の鐘

 除夜に大きな鐘を付いたことがありますか。
 近所に鐘を付くお寺はありますか。

 深夜、暗闇のなか。鐘を付く人の息ずかい。
 寒い、震える、緊張。
 私が千葉県中山の法華経寺にいたときも、大勢の人が鐘を付きにきました。
 ます酒を振舞います。
 新年を迎える喜びの美酒であったでしょう。
 午前零時の第一打。
 瞬時のことなのに、気持ちがかわる。何故なんでしょう。
 今思えば、生きている、ということかも知れません。
 それは今も同じかもしれません。
 過ぎ去った一年の反省と来る年への抱負。
 十代の時の私は不安ばかりであったように思う。
 自分の将来が見えない時期だったし、船橋高校の定時生が苦しかった時でした。
 書道の師範になって生活の補助をしなければと思ったこともあります。
 だが、下手な字なので暗い希望でした。

 海外で正月を迎える人は鐘の音をテレビで聞くのでしょうか。
 だんだん除夜の鐘は遠ざかっているのでしょうか。
 遠くなる。
 私の同級生で檀家さんだった人が亡くなりました。
 除夜の鐘は死んだ人を思い出すことだと言った人がいます。
 鐘の音が小さくなって遠のいて行く。
 寂しさを感じる。
 高僧は死への一里塚と言っています。
 年齢を重ねると音に余韻ができるもの。
 だが、
 百八の煩悩を滅尽するための鐘が、百八の願いが叶いますようにと聞こえもします。

 除夜の鐘の音、来年はどのように響くのでしょう。
 生きていること、生かされていた私というものを感じたいものです。
 地球の出している警鐘。
 あなたにも聞こえていますよね。
 皆がいっしょに幸せになること、宮沢賢治の言葉です。