33.「イチローは男だ」

 王ジャパンは期待以上に日本人を興奮させた。
 その主役はイチロー。
 韓国第二戦の敗退にイチローは悔しさを体全面に出した。
 冷静沈着というイメージを完全に打破した瞬間だ。
 私だけではなく、ナインも野球界の人も、王監督でさえ驚いた。
 敗戦の将はイチローを男と称えた。
 日本人のサムライを想像させた。
 一つのことに全員が一致して、命がけで進む姿が心を打った。
 世界の王に恥をかかせたくないという男の言葉が新鮮だった。
 その信念が奇跡を起こし、ついに世界一になった。
 テレビの視聴率は上った。
 電化店や食堂など力道山いらいの街頭での観戦だったらしい。

 あなたはいかがでしたか。

 トリノは大きな成果がなかった。
 しかし、パラリンは大きな成果を上げたのに報道が少ない。
 同じ人間なのにどうしてか。

 WBCにしても最初の関心はどうだったのか。
 これで早々と負けていたらどうだったのか。
 ほかの、サッカーやバレーなどの競技はどうなのか。
 弱者に対してはどうなのかという疑念を持つ。
 そして、このことも忘れられていくのだろう。
 しかし、わかったことは日本人の自覚が皆にあったということ。
 そして、宮沢賢治が言ったように、私達の幸せは個人ではなく、
 皆が信頼して一つになって生きていくことにあるということだ。
 家族のみんなが幸せであることを望むように社会にもそう望みたい。
 感動をありがとうという社会が仏教の目指す国なのだ。