45.死んでも救われない

 人間は怖いというが、まだ他の生物から見たら倫理観をもっています。
 おかしなことと思われるでしょうが、動物の世界は弱肉強食の食うか食われるかという世界です。私たち人間の世界はまだ秩序が残されています。しかし、今でも人間が人間を殺す出来事が続いています。
 日本も昭和20年に敗戦するまでは、いやおうなしに殺戮を強要されていました。私は戦後の生まれですので空襲とか、死体の上を踏みながら逃げたという経験はありません。明治維新のときにも、それ以前の武士の時代も殺戮の時代でした。強い者が弱いものを支配するのです。人間はそういう歴史を繰り返してきているのです。権力を握るためには親子でも兄弟でも夫婦でも殺してしまうという人間の心理はどのようなものなのでしょうか。恐ろしいことですが、それが人類の歴史なのです。そして、それが今でも引き続き行なわれているのです。日曜日に教会に行くので選挙は火曜日にするスーパーチュウズデイ。神に己の罪を告白しなければ心が救われない、戦争の経験者はそうだと思います。靖国神社にまつられている英霊。供養しなければ救われないと思うからです。
 最近目立つのは親子の殺人事件です。子供が親を殺傷した事件、親が小さな子供を殺傷する事件。親子関係に異常がおきているのです。最近の葬式で聞くことですが、親が死んでも悲しまない家族が増えたということです。昔でしたら50も60にもなった大人が人目をはばからずに親の遺体にしがみつき悲しんでいました。見る者も涙をさそわれました。それが今はないというのです。
 何が欠如したのでしょうか。親子の愛情を育む時間がとれない時代なのでしょうか。

 私の子供が修学旅行で沖縄に行き戦争被災地をまわるそうです。慰霊の碑などを見学し戦争のはかなさを学んでくることと思います。学校のなかで戦没者の幽霊がでるという話しがでて、毎年、何人かはそれで寝込んでしまうということなのです。戦争の英霊は今でも人間の命の大切さを教えていると受けとめることなのでしょう。親子の関係も死んでも救われないということでは悲しすぎます。人を大切にしましょう。