48.人心の災害

 日蓮聖人ほど、人間の行いが自然におよぼす影響が大きいとのべた人はいないといえます。
 国宝となっている『立正安国論』は、まさにそれを時の権力者であった北条時頼に説いたものでした。その論拠は仏教の経典のなかに説かれた三災と七難についての仏語でした。三災とは火災・水災・風災をいい、これは大の災害にあたり、小の三災には、刀兵災・疾病災・飢饉災の3つが説かれています。
 今日の世界はどうでしょう。ミャンマーではサイクロンで150万人が被災し、とうぜん伝染病や飢饉の問題がおきてきます。温暖化がすすみ環境の変異により、生命体の変化や食料にも影響し、すべてのことに危機がせまっているといえます。
 また、戦争がつづき、ウイルスも怖くなり、40年後には食料がどうなるかと言われています。私達の子供や孫が心配です。それに加えて生活苦が長く続くようになると、将来に希望をもてず、また、子供をもうけることが子供のためにどうなのかを考えさせられます。これは20代の女性・男性に大きな課題となっています。
 日蓮聖人は法華経の信仰によって、これらが解決できるというのです。仏・菩薩はつねに私達を救おうとされていて、日月なども私達を守るための菩薩行をしているとうけとめています。法華経を唱えることにより、その私達を守る善神が力を得て守護するというのです。そういう信仰心がうすれ忘れ捨て去られることにより三災がおきるとのべたのです。
 神仏の存在を現実のこととしてうけとめたのです。信仰の心をもつことにより、人類やすべてのことに愛情をもつようになると考えたのです。信仰は自己の悪心を反省し、なにが大切なのかを知る動機となりえます。そこには仏教で説く罪業観があります。
 過去の世で犯した罪を消滅して、未来にはより完成された自己を目的としていくのが信仰ともいえます。
 私たちの智慧でははかりしれないことがたくさんあるのです。