56.お経は、体をさすってもらうように、有難い

 先日、年忌法要があり、本堂のご宝前でお経をあげていると、後ろからご子息さんのお経の声が聞こえます。法要を終え向き直って見ると、赤い表紙の「朝夕のおつとめ」を手に持っていました。
 読経をしながら、親がお経をあげているのを見て育った子供は、親がしていたようにお経をあげるものだと、感慨深く思っていました。
 ことわざに、
「子供は親の言うことを聞かないが、 親と同じことをする」

と言う言葉があります。ご両親のお顔が浮かんでまいります。
 お経をあげながら、亡くなった人に聞いてみました。「お経はどのようなものですか」。ゆっくりと、「身体をさすってもらうように、ありがたい」と答えました。
 日蓮聖人は、佐渡からはるばる阿佛房の1周忌に来た子息を褒め、阿佛房の妻、千日尼に、

    「子に過ぎたる財(たから)なし。」

と、お手紙を書き送っています。
 法華経の尊さ、信仰の尊さに手を合わせ、日蓮聖人の教えを受け継ぐ信徒としての自覚を深め、日蓮聖人に褒めていただけるよう精進いたしましょう。