59.お香の功徳

お釈迦さまのために、二人の若者がお堂を建て、お堂に迎えて教えを聞きたいと願って、お香を焚いたという話があります。
このお香の香煙が風に吹かれて、はるか離れたお釈迦様のもとにとどき、御頭(みぐし)の上を天蓋(てんがい)のようにおおいました。お釈迦様は二人の信仰の深さを知って、お堂に来られ道場を荘厳したという話しです。
実は、この故事によりお香を焚く信仰がおきたといいます。

お香のかおりはイヤな臭いを除き、身心を爽快にすることから、10の功徳があるといわれています。邪気を払い、室内を清め、頭脳明晰になる、などと説かれています。なかでも仏・菩薩の供養になることが説かれています。ご先祖さまも、この薫りよい香の徳をうけて仏果をましていきます。

古人はお線香の燃え尽きるのをみて無常を悟ったと言います。つまり、誰もが死から逃れられないことです。お香のある間は煙と薫があるが、いつかは一片の灰がのこるだけ、私たちの命もかくの如し、と悟ったというのです。

しかし、燃え尽きるまで身を灰にして生きる姿こそが、仏であり菩薩の姿そのものです。お線香は、私たちに燃え尽きるまで消えることのない人生観を示唆しているのです。

大事なのは、いかに良い香りを皆に施して生きていくかなのです。これを精進といいます。
古歌に、

 世の中の  人とお香の  よしあしは   煙となりて  のちにこそ知れと詠っています。

日蓮聖人は、自分の欲望を満たす信仰ではなく、自分以外の人の幸せために祈ることが大事とのべています。菩薩とは、それができる人のことなのです。