80.常説寺の白輿(しらこし)について               高橋俊隆
 山梨県甲斐市吉沢に常説寺というお寺があります。順徳天皇ゆかりの国重要文化財「白輿」を寺宝としています。 日蓮聖人御一泊説法の後、日蓮宗に改宗した歴史ある日蓮宗のお寺です。

承久の乱に敗れた順徳天皇は佐渡へ流される途中、常説寺に萩堂を建てて半月余り逗留されています。その後、順徳上皇が、越後寺泊から甲州御岳金峰山に奉幣のため、順徳天皇が御使用された輿(白木造りの輿)を使わします。勅使は圓乗寺萩堂に輿を留め、半月あまり天下泰平を祈願し、その法施として順徳院号を降ろされ、順徳院山圓乗寺と寺号を改めました。
 文永年間(1270年頃)に日蓮大聖人が甲州巡錫の折、天台宗寺院であったので、常説寺へ御逗留されます。常説寺が順徳上皇に御由緒ありと聞くと、承久当時の昔を偲び、法華経の御説法をされます。時の住僧乗蓮僧都は大聖人の教導を受け、御弟子となり、天台宗を棄てて名を安楽院日乗と改め、寺号も順徳院山常説寺と改めました。以来七百余年、法燈相継ぎ釈尊の正法、妙法蓮華経を常説法教化し今日に至っています。

 

有職故実の権威、江馬務氏の発言

「いろいろ綜合するに、この輿は極めて高貴の方の御乗用であった証拠と、鎌倉初期の形式実質を備えた点で畏くも順徳天皇のご配流にご使用あったものであるということ、疑う余地がありません。国宝としての価値が十分存しております。」

日本最古の板輿(白輿)は、昭和二十四年五月二日、国の重要文化財に指定されました。

『日蓮宗尼僧教団四十年のあゆみ』参照。