95.生きていく                高橋俊隆

 信念をつらぬくことは難しいことです。

 一番の原因は自分の心の弱さにあります。

 また、障害となることが起きる場合です。

 ことわざに、「(うお)の子は多けれど、(まこと)の魚となるは少なし」

 魚の卵から稚魚になっても、成魚になる数は少ないということです。

 体力の弱さ、ほかの魚などに餌食されてしまうからです。

 自分が一生懸命に生きようとしても、思うようにはいかない。

 このことわざには、次の文句が続きます。

「多くは悪縁にたぼらかされ、事にふれて移りやすきものなり」

 私たちの身において考えますと、誘惑に負けてしまうということです。

 その誘惑に打ち勝つことができない。

 だから、悪縁になるのです。

 悪縁に近づかない用心をすること。

 煩悩に屈せず信念をつらぬく覚悟を持てるか。

 それには、誓うこと。

 神仏に祈願をかけて護っていただくことも必要です。

 そこにこそ、生きているよろこびを。