96,一つ年をかさねるよろこび              高橋俊隆

 新年を迎えて happy new year と喜ぶ姿に、老年になって死に近づくのに、何がうれしいのか? というのも真実ですが、新しい年を迎えたよろこびを皆で祝うことも真実です。

 私の母は生家に帰って父母とともに正月を迎えていました。兄妹もたくさん集まり、年数を重ねるたびに結婚して来る人、子供を連れて来る人、親族がゾクゾク集まり、従弟の交流もありました。

 土間で餅をつきあんこ餅をまるめて食べるおいしさ。おばあちゃんの笑顔と心のぬくもりを感じたものです。

 そういう「家」に集まる景色が少なくなりました。核家族、少子化などによること。

また、こういう時にしか行けない海外旅行など、家族の楽しみかたが変わりました。

 置き去りにされたのは何か。一番は仏壇の飾りであり、先祖とともにお正月をむかえるという風習です。

 新年を迎えるよろこびを、ご先祖に伝えるうれしさ。

 1年をふりかえって、どのように家族がすごしてきたかを語るよろこび。

 そして、今年もご先祖さまの意思を継いで、ともに生きていくことを誓う。

 社会の浄化に少しでも貢献し、それが世界の平和となることを願い、

 それを忘れて真実のよろこびはあるのでしょうか。