134.彼岸に至る                          高橋俊隆

序品第一のお経に、文殊師利菩薩たちが、仏を供養し自ら修行して「彼岸に至った」と説かれています。

「菩薩摩訶薩。八万人。皆於阿耨多羅三藐三菩提。不退転。皆得陀羅尼。楽説弁才。転不退転法輪。供養無量百千諸仏。於諸仏所。植衆徳本。常為諸仏。之所称歎。以慈修身。善入仏慧。通達大智。到於彼岸。名称普聞。無量世界。能度無数。百千衆生。其名曰。文殊師利菩薩。観世音菩薩」

菩薩の修行は六波羅密と言って、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧を磨く修行をします。序品のお経には、

たくさんの仏を供養し

たくさんの功徳を積み 諸仏から褒められた

慈悲の心を持ち

身心を清め

仏の智慧に従い 彼岸に至ることができた

と説かれています。彼岸とはどのようなことでしょうか。一つには迷いや苦しみが多いこの世界(此岸)より、安穏で楽しい浄土の世界(彼岸)に至ることを言います。それは簡単ではないことから、ガンジス河のように、向こう岸が見えない河を、超えて行くことに例えました。私たちが求める安楽な彼岸とは悲願でもありました。

 仏道修行は毎日のことですが、仕事に追われている人は、せめて春と秋の農耕の変わり目に先祖の供養を行うことに決めたのです。この短い期間だけでも菩薩に倣った修行を試みたのです。

 日蓮聖人はこの六波羅密の修行の肝要は、題目をお唱えすることと教えられました。六波羅密の中心は智慧にあります。この智慧は法華経の信心にあると説きました。これを「以信代慧」(いしんだいえ)と言います。一念の信解によって唱える題目に、六波羅密の修行が具わると述べています。

 ご先祖の血は私たちに受け継がれています。そして、子孫に受け継がれていきます。法華経の功徳を先祖に供養し、子孫に回向されるよう、日夜、信仰に励みましょう。