143,精竜の滝とかっこちゃん                           高橋俊隆

 むかし、西野の山奥に精竜の滝があり、そこに道場がありました。妙覚寺別院とか精竜の滝練行道場と看板をだしており、私たちは「お滝」と言っていました。西野の墓地に池があり、ここを平和の湖とよび平和湖荘というジンギスカンの店がありました。安藤さんという方がオーナーで、お滝の道場のところに温泉をほり保養地とする計画を立てていました。

ところが、この滝にて事故に遭い死亡する人が多々ありました。上田さんという方が先代の尼さんにお話されて、何かがあるので見てほしいということが発端になりました。ここで、様々な霊障的なことがあり、お滝の霊を鎮められたのです。当時の檀家さんが整地をして、道場を建てたのでした。

ある夜、尼さんの枕もとにきた少女がいました。すでに亡くなっている子供でした。お経の声にひかれて、ここに来たということでした。話を聞くとお滝の上流に金を掘る鈑場があり、そこに両親といっしょに暮らしていたそうです。ある日、川で遊んでいて流されたそうです。子供のなまえを聞くと「かっこちゃん」と言いました。

かっこちゃんが尼さんに言うには、お母さんが今度まちに行ったら手毬(てまり)を買ってあげるといったので、それを楽しみに楽しみにしていたと言います。

そこで、尼さんはわかったから明日買いに行こうねと言って、その日は休まれました。明くる日、西野、二股をさがし、ついに狸小路にいって手毬を買ったそうです。さっそく御寶前にそなえて、これで安心したねと言った夜、トントン、トントンと御寶前で音がします。御寶前の手前は板の間だったので、そこでかっこちゃんが嬉しそうに手毬をついて、尼さんにみせるのです。その次の日も手毬をつきました。尼さんはそこは御寶前でお祖師さまに失礼だから、台所のところで遊びなさいと言います。それから、何日も何日も、トントンと音がしていましたが、やっと安心して帰るべきところに帰ったのです。

私がお寺に入ったときにも、かっこちゃんにと言って、お盆にはかならずお菓子とお人形さんなどをあげていました。

精竜の滝ではまだまだいろんな体験をさせていただきました。道場というだけの修行を重ねたところでした。