150.日蓮聖人の御手紙に涙                           高橋俊隆

 日蓮聖人が書かれた御手紙を拝見していて感じることは、信者との強い繋がりです。とくに佐渡の信者たちに宛てた手紙の筆跡をみていると涙が出ます。今なら顔を見ながら話ができます。阿仏房が三回目の身延を登詣したときは90歳になっていました。このときは通行の状況が悪く20日もかかって身延に到着します。同道した国府入道は途中から引き返します。阿仏房も翌日に帰路につきました。佐渡の畑の仕事があったからです。

 信徒たちは幸せであったと思います。迫害された苦しみがありました。信仰のため親しい人たちとの間も裂かれたでしょう。仕事を失い所領を奪われた人もいました。それも法華経の信仰をするためです。日蓮聖人を敬うからなのです。世間の冷たい仕打ちに耐えられない人は信仰を捨てました。

 それでも信仰を続けた人たち。ささやかなご供養を送られた人たちもいます。日蓮聖人は一人一人に感謝の言葉を書き、ご供養により命を支えることができること、法華経を弘めることの有り難さを説きます。大きな功徳であることを述べます。

 病を得て身体が弱くなり、老人となり死を迎えようとしても、心は幸せだったと思います。日蓮聖人という人に仕えることができたからです。どのような苦痛があっても耐えられたのでしょう。日蓮聖人の御手紙の文字を拝見していて、御手紙を書いている日蓮聖人と、御手紙を受け取って涙を流して読んでいる姿が見えるのです。