令和１年６月12日に、日蓮宗中部教区師恩会の教師研修に招かれまして、桑名市顕本寺さまを会場としてお話をさせていただきました。熱心に聴講いただきありがたく思いました。

　伊勢」と日蓮聖人の関係については深い事柄が多くあります。まず、日蓮聖人がお育ちになった安房地方は伊勢・志摩の人たちが海流に乗って移住してきたことです。それは、天皇や伊勢神宮に貢納するアワビなどの海産物を求めてのことでした。ですから、安房地方の人々は天皇と伊勢神宮の天照大神を特別に信奉されていたのです。日蓮聖人も子供のころからその信仰の中に育ったのです。

　日蓮聖人の父親は貫名重忠といい、もとは遠江国貫名の領主でした。今の静岡県袋井市になります。この時期、北条時政が遠江守となり暴政を行います。時政の長女が尼将軍と呼ばれた北条政子です。日蓮聖人の信者の大学三郎は比企能本といい、その父親は比企能員です。この比企能員の一族を奸計にて滅ぼし、比企能本の姉が嫁いだ将軍の頼家を殺害したように、大きな社会不安が起きました。このような時期に「伊勢平氏の乱」がおきます。

　この「伊勢平氏の乱」に連座して流罪となったのが、日蓮聖人の父貫名重忠と叔父の小林実信でした。ですから「伊勢」と日蓮聖人は深い繋がりがあるのです。

　安房の「海人」と呼ばれる人々は祖先より天皇への貢納を喜びとし、天皇の祖先神であり日本国を守るとされた天照大神への強い渇仰をもっていました。日蓮聖人の大曼荼羅御本尊に天照大神が勧請されていることからも分かると思います。清澄寺へ入り虚空蔵菩薩へ日本第一の智者とならして下さいと誓願を立てられた一つの理由でもあります。

　比叡山に入られた日蓮聖人は高野山など諸国の碩学を訪ねて勉学されています。伊勢神宮は学問を求めてではなく、幼少のころから信奉されてきた天照大神への参拝をなされたと思います。以上の深い結びつきを思うと、伊勢神宮に詣で、天照大神に面奉されないわけはないと言い切れます。

　日本国守護の天照大神と日本国の人々の幸せ成仏を誓っていた日蓮聖人との感激の霊地、その本場にて、つたないながらも一生懸命にお話をさせて頂いたご縁に感謝しています。