令和三年二月十六日、千葉県小湊の誕生寺において、厳粛に生誕八〇〇年の法要が行われました。新型コロナの渦中、参詣者を縮小し、僧侶もマスクをしての勤行でした。ユーチューブにて法要の動画が拝見できて、私たちも一緒に法要に参列できたよろこびがありました。

　日蓮聖人がお生まれになり、いよいよ法華経が広まる動きが起きたと思うとともに、それ以前に先に生まれて日蓮聖人をお待ちになっていた人も大勢おられたと思いました。幼少の名前は善日麿と伝えられています。両親は武家の出自であることは、今日においてはっきりしています。源平の合戦などのように勝者がいれば敗者もいます。父親は立派な武士でありましたが小湊に流罪となり、領主の荘官の役職に就いていました。母親は下総の大野氏の娘でしたので由緒正しい家系の女性となります。婚姻の仲介をとったのが千葉氏の統領でしたので、父貫名重忠の人徳が優れていたことがわかります。

　善日麿はその両親のもと兄弟仲良く育ちました。普通の子供と違ったことは国家に対しての意識でした。平和で幸せな生活は為政者の人徳により実現できることを知っていたのです。現実には地頭の武力的な圧力に困窮し、鎌倉や京都の人々も災害の続出により困窮していました。とくに、善日麿が疑問に思ったことは後鳥羽院。順徳・後鳥羽院が承久乱のより流罪になったことでした。善日麿にとって天皇は最高の徳をもち、天照大神も八幡大菩薩が護ると思っていたらからです。くわえて、浄土信仰者が地獄のような苦しみをして死んでいったことでした。仏教は極楽浄土に行き、信仰者は安楽に死後を迎えると説いているのに、現実は違うのと見たところから、本当の仏教、真実はどうなのかと疑問をもちました。ここから、清澄寺にて出家しその後の鎌倉・比叡山への向学と進んでいきます。

　生誕のよろこびと共に、これからの善日麿の苦労がしのばれます。佐渡に流罪されて『開目抄』『観心本尊抄』、そして、大曼荼羅を図顕されます。大勢の信者が日蓮聖人を助けられました。

　私たちはどうなのでしょうか。生まれて来る前は必ず法華経を信仰しお祖師さまのためになろうと誓って生まれて来たのではないかと思うのですが、そのように生きてきたのか、生きているのかを思うと、その半分にも及ばないと思ってしまいます。

　お祖師さまの信者や弟子のなかにも大勢の人が退転しています。まさに、「魚の子は多けれども真の魚と成は少なし」の言葉が身にしみます。

　誕生寺の８００年の法要を見て全国の信者の皆さん、仏門の僧と共に合掌できたこと、この尊い慶賀を迎えられたことを嬉しく思いました。また願い叶わず遷化された同学の諸師も浄土にて、生前に精進して生きていたことに悦びを感じているものと思います。その願いは生きている者がつぎつぎに引き継いで行くのが、日蓮聖人の門弟の約束でもあります。

　「生誕」の言葉には若さがあります。これからの未来を切り開く生命力を持っています。そう思うと体に力が湧いてきます。これからが出発です。皆さんも力強く信仰に生きていきましょう。お祖師さまの教を伝えていきましょう。信仰を継承しそれを子孫に教えることが最大のすべきことです。妙覚寺を護ることは法華経を弘めることになります。法華経の信仰に誇りを持って生きていくことを、お祖師さまに誓いましょう。