54.尼様のお姿を拝見しました

 1月13日、今年最初のお祖師さまのご命日のお参り。
 いつもとは違った張り詰めた御宝前。
 道場ゲの声明をとばしてすぐに勧請・無上甚深と読経。
 真剣勝負のような緊張感が読経のなかに走ってくる。
 雨だれのモクショウを打ちながらも、木剣を振るしぐさになる。
 そういえばお滝の道場でのお参り。
 また奥の院での御前さまのお経。
 そんな身にヒシヒシと何かが迫っている気配。
 お経がおわりお題目。
 気持ちが集中できる。
 視線をお祖師様に。
 尼さんが御宝前におられる。
 お祖師さまのすぐ前に立っておられる。
 修法衣を着ておられる。袈裟も修法用。
 尼さんがおられる!
 と思った瞬間、尼さんが左に首を向けてニコッとされた。
 「俊隆に気づかれたネ」
 手の左に切り火、右手には木剣であろう。
 首にこげ茶の撰法華経が入っているセンキョの紐が見える。
 お祖師さまのお顔を拝見して尼様は姿を隠された。
 お祖師さまのお顔が優しい。
 前かがみになって尼さんを見ておられた。
 おじいちゃんが孫を見ているよう。
 お祖師さまと尼さん、今でも繋がっておられる。
 さて、尼さんは何をご祈祷して下さったのだろう。
 今年の熱湯祈祷、充分に行を積み万全を期したが何か不安。
 皆さんのお加持をすませて、再度おイモを熱湯の中からとりだす。
 イモがぎっしりつまっていて抜けない。
 再度、手をいれて今度はがっちりつかみ取り出した。
 薬指に水膨れができた。
 法要を終え皆さんが帰ったあと、お祖師さまにご挨拶。
 法華経の力。祈祷の秘法の力を再認識。
 人を救おうというものをイモを取りにいってしまった。
 その自分の迷いを指に謝る。
 さらに行に心がけようと誓った。
 そういうときの尼さんの姿はうれしかった。
 檀家の皆さんも尼さんに守られているのだと思った。
 妙覚寺を大事に守りなさいと私達に言っておられるのだ。