76.センダラの成仏
 センダラとは殺生業者の総称をいいます。『雑心論』に12、『涅槃経』に16、『対法論』に14の旃陀羅の例を挙げています。主に屠羊・屠犬・屠牛・屠魚・屠鳥・伺猟・猟師・猟鹿などを指します。つまり、日蓮聖人の父親は旃陀羅(男、女性は旃陀利)であり、狩猟や漁猟などの殺生を仕事として生活している者の子供であるとのべています。
日蓮聖人が幼少時に仏教に求めたもの、虚空蔵菩薩への誓願とされたこと、出家にいたる疑問だったこと、そして、日蓮聖人が比叡山において解決されようとしたことはなにかといいますと、それは成仏ということに帰結します。  

日蓮聖人は幼少のころから旃陀羅の成仏をこころにかけており、それは、五逆・謗法の者の成仏ということに進展していきました。これは一切衆生が仏教によって救済されるべきというのが根本の疑いであり願いであったのです。幼少から抱いていた旃陀羅の成仏ということについては法華経こそが成仏の直道という結論を得ました。成仏については、『戒体即身成仏義』にのべているように、諸経における戒体と成仏が追求されており、そのなかで即身成仏できるのは法華経の迹門の十界互具を依拠としています。旃陀羅の成仏は法華経の提婆達多品の悪人成仏と龍女の女人成仏を現証とし、十界互具論における一切衆生の成仏を解決されました。
 そして、南無妙法蓮華経と題目を唱えることにより、この功徳の力によって救われると説いたのです。