87.精竜の滝(11)白く光った剣ー2−

白く光った物が滝の中央よりやや上から見え、それがこちらに向いているのを感じました。滝の音もしない静寂な中に、それがすべるように滝の落ちている水の中から出てきます。すぐに刀のような剣であることがわかりました。1メートルくらい剣先が出たところで、両刃の厚い剣であることがわかりました。どんどんこちらに向いて剣が出てきます。思ったより長いと思った瞬間に、私のほうへ向かってきます。長さ2メート以上はあったと思います。
 日本の刀をイメージしていたので手の持つところに鍔があると思い、こちらに来たらそこを打って払おうと思っていましたが、鍔がない長身の両方に刃先がついている刀だったのです。
 私は始めて見るものなので驚いたのと、どうしたら剣をよけることができるかと思ったときは、すでに私の体に突き刺さってくる瞬間でした。御祈祷で木剣を打っているときでしたので、木剣でよけようとしましたが、一瞬の間に剣が通り過ぎて立ち向かうことができませんでした。
 それと、滝の中から2本目の剣が私に向かっていましたので、気持ちはすぐに2本目にいき、それをよけようとします。つづいて3本目が私に向かっていました。3本目は確実に木剣で打ち払いましたが、さいわいに4本目が来なかったので救われました。
 私の感覚では2本目、3本目とだんだん長くなった気がしますが、それは剣を払おうと対応する心の目の違いかもしれません。ご祈祷が終わり法要も無事に終えて安心し、右肩や右腕が無事にあるなと思い、ふと右の衣をめくって腕を見ましたら、30センチくらいの長さに線をひいたような真っ直ぐなキズが2本ついていました。1本のキズは手の甲から体の内側に向かっており、もう一本は親指がわから外に向かってのキズでした。
 ひっかきキズのようなものなので血はでていませんが、はっきりキズはわかります。ぞっとしながら妙伝さんに、滝から剣が飛んできたんだよと言い、まだお滝も怖いねと妙伝さんと顔を見合わせました。
 今もお滝はそのままだと思います。ご祈祷はなにがあるかわからないので真剣にしなければならないと、つくづくわかりました。ご祈祷をしているときは目を閉じてはいけないといいますが、このように目に見えてくる物といっても、誰でもが見えてはいない物がほとんどなのです。手にキズがあって本当だと妙伝さんも驚いたのです。それも人がつけたようなキズとは思えないくらいのキズ跡だったからです。