98.ヒマラヤの寒苦鳥

ご挨拶に伺おうと思っても、なにかと無沙汰をしてしまいます。これが、どうしても行かなければならない事情があると、なにを差し置いてもうかがうものです。

 歯が痛くなって、歯医者さんに行くようなものでしょうか。歯が痛いのを、がまんして、がまんして、やっと行く気になることが、しばしばです。そのときになって、もっと早くにくれば、治療も早く、痛手も少なかったと思うものです。

 また、のどもと過ぎれば熱さを忘れる、というように、そのことを、忘れてしまうのが人間というものです。

 ヒマラヤに寒苦鳥(かんくちょう)という鳥がいました。名前からみてわかるように、ヒマラヤに冬がおとずれ、だんだん寒くなってきます。鳥は明日になったら、巣作りをして、暖かい夜を迎えようと思います。

 しかし、翌朝になり、陽がさしてポカポカすると、つい、居眠りをし、巣を作るのを忘れしまいます。夕方になり寒さがジンジンと体にしみこんできたとき、ハット、巣を作ることを思い出します。そして、明日こそは巣を作ると強い決心をしますが、また、翌日になりポカポカすると、寒くて苦しんだことを忘れ、その夜も、次の夜も、同じことを繰り返すという、説話が仏典にあります。

 これは、自分自身にたいしての反省と、自分に強い意志をもつことを私は教わります。今日できることを明日にのばすな、ともいいます。

 お寺参りに行かなければ、と思いながらも、なにかと忙しいことと思われますが、たとえば、月に一度はお参りに行く、そして、お祖師さまにご挨拶をし、法華経の信者であることを、お伝えする、という、心が必要です。

 なにのために、お寺にお参りに行くのかを考えるまえに、お寺に行って、お祖師さまにご挨拶をするという、そういう信仰心のある信徒になってもらいたいと思っています。