2.尼さんの日記より
 精竜の滝を始めてみるまで(2)

 「精竜の滝行堂の開堂式・・・・期待したその日夜が明けるのが遅いように感じながら、一早くカーテンをあけて見て空一面の曇りに・・・・合掌をした。宇恵田様の話・・・・三年前に魔の出ると云う滝の話を聞き、一度是非行って見たいと思った事が・・・・実現される事になったが場所を知らず種々苦労しながらもその方向に進んで居た。」
 平和湖荘に三人がテイサツに行って精竜の滝は、知らせてもらえなかったが宇恵田さんより安藤さんの事を聞いて居たので、滝はこの方向の川上にある事を確信して、道を行くより川を上って行く事に決めた。長靴のまま川に入り深い所は出来るだけさけたがヒザをこえる程の所もしばしばあり、水の入った長靴は大変に重たく・・・・しかし、それもかまわず登るにつれ、木々も深くなる。みんな心細くなり出したらしいが、私がそばに居ると云う心強さもあり・・・・しばらく登ったが・・・・滝らしい音も聞えず皆んなもだんだんつかれが出て来たらしい様子で、一休みする事にした・・・・フト時計を見ると川に入り登り出してから二時間もたって居た・・・・あたりを見まわすと木々は、ますます深まり、川の中には大水の出た後の大木が横たわり、だんだん気持が悪くさえ感じて来る程だったが、もう少し登ってみて登って見て滝が見えなかったら帰るつもりで、又、登りはじめた・・・・どのくらい登ったか?みんなにも休む様に云い、私も大きな石に腰をおろして休み、Kに私がここに居るからもう少し登って見る様に云った。三人は元気よく登っていたが、しばらくして曲り角の所で滝の音が聞えるからとむかえに来た・・・・私は疲れも忘れて登って行くと、すぐ目の前に滝がゴウゴウとすざましい音の中に見える高さ16mか17mもあるか、左右は巖石が、おおいかぶさる様にあたりは、うす暗い・・・・宇恵田さんの云われた滝かしら?・・・・話には殺気がある滝・・・・?だが此の滝には殺気が感じない。Kが「先生、拝んで見ればわかるんだから拝んで見て」と云う。まず、みんなを滝の前に来る事を止めて、私だけ滝の前に行き、お経を唱えて見たが何事もなく滝の水を手にすくい一口飲んでから独「一人」言の様に、『心配するな私が来て色々として上げるからそれまで待ってなさいね』・・・・『何故、云ったのか、自分でも知らず滝と約束した。』
 みんなの所へもどって行くと、先生どうでした?と聞かれ、別に何でもないよ・・・・だけどなんで云ったか知らないが、私がして上げるから心配するなと約束して来たよ・・・・変だね「何をして上げる約束だろうね。」と云いながら左右を見たら、右側の上の方が特に明るく見える所があるので、私達より高い笹をわけて登って見たら、そこに道があり、スズランの滝という立て札があった。みんな、なあーんだ「精竜の滝でないもの恐ろしくないんだね」と云いながら道に出て来た。それにしても変だと思いながらも、又そこから300m程登って行って見たが、ついに滝がわからず帰る事にした。