3.尼さんの日記より
 精竜の滝を始めてみるまで(3)

 三時半ころと思うが、山と山の沢のためもう暗い感じ。スズランの滝のこと、精竜の滝とも知らず帰った。
 登るときは二時間もかかったものが、帰りに道路を帰ったので三十分くらいで平和湖荘へ着いた。寺へ帰った時は五時ギリギリでした。
 翌三日、宇恵田さんへ報告。奥さんいわく、「変だね、私も行って見る。」と言い出して…。翌四日、豊平方面のお参りを終えて、二時ころお上人、私、K、宇恵田さん、宇恵田さんの孫さんと五人、車で平和湖荘へ来た。
 この日も良い天気でススキが私たちを喜んで迎えているように、頭を下げたり上げたり、私も手をふるような気持でした。宇恵田さんは一度来たこともあり、安藤さんとも顔なじみで精竜の滝の話をしたり色々昔話をしてましたが、安藤さんの道案内で山に登った。
 私たちが前に歩いた道、来た所がスズランの滝。この滝が精竜の滝だったのです。笹をかきわけ滝の前に来た。皆お腹がすいたといって持ってきたパンを食べだした。
 私とお上人は滝を見ていた。前日見た滝より殺気があり、寒さを身に受けた。その内に私の気持が空の上に浮いていくような気持というか…気持が二つになり、滝へ走って行きたい気持と恐ろしい気持、何とも言いあらわされぬ気持になってきた。
 お上人はすぐ私に気付き、私の前にツカツカと来て、「尼さん、この滝はお題目をたくさん上げ、寿量品をたくさん上げないと滝のそばへ行けないよ。行ってはだめだよ。」と二度三度言いました。
 お上人の言われることもわかり、自分では「そうだそうだ」と思いながら、どんどん滝にひかれてどうすることもできず、滝の前の大石へ走るようにして来てしまう。
 お題目を何度唱えたか知らないが、目の前に青紫の丸い手まりのような玉が一つ、二つ、三つ、四つと、滝つぼから舞い上がる。私は夢中で「ご祈祷の支度をして行かなかったので」素手で「クジ」を切る。
 玉は右に左に上に下にと飛ぶ。どのくらいの時間だったか、玉は五つか七つかはっきりおぼえていない。玉が滝つぼにおさまり、気がついたときは後ろの方で皆が大きな声でお題目を唱えていた。
 玉がおさまった時は気がついたら、私の手の甲から血が流れていた。滝の水で洗ったが血が止まらず、タオルをまいたが上までにじんで出てきて止まらない。
 皆の前へ来た。宇恵田さんは持ってきたパンを供えるやら、お題目を唱えるやら、皆も夢中だったらしい。
 帰ることになったが、安藤さんが腰が立たないというので、kに手をとらせたが、まだ立つことが出来ないので陀羅尼を唱えながら二人で立たせた。
 滝の玉は七つぐらいと見たがそれより多いとも考えられる。手の血が止まってから見たところカミソリのような物で切ったように見えるが、それより変に思われるのは人の顔に切れていること。マユ、目、耳、鼻、口とヒゲまでついて切れていることだった。
 安藤さんの話によれば、この滝を御祈祷したお寺さんは六人もいたとのこと。
 何の縁か此処に妙覚寺別院ができたのである。
 十月中に出来る予定が雨が多く、十一月十三日の開堂式、地鎮祭も雨、上棟式も雨で、今日の開堂式も雨。御祈祷は曇っていましたが、おかげ様に降らず、お滝へ行って寿量品を書いた小石を投入するころからキリ雨が降り出してきた。
 五百十個の寿量品を書いた小石、妙法のお題目で五百十七個を投入したので時間もかかりましたが、その間、キリ雨でお滝の霊が泣いているように思われました。